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もしもの小部屋 #6 西脇徹さん<経験は財産!財布ひとつで旅に出よう>

西脇さんもしもインタビューサムネイル

【ゲスト】

有限会社カツミ工業

代表取締役 西脇 徹(にしわきとおる)

ボランティア事業Instagram https://www.instagram.com/smileflower5371/

カツミ工業HP https://katsumi.smileflower.org/


有限会社カツミ工業・代表取締役の西脇徹さん。

現在は、移動式アースキューブなど環境機器の販売や農業をおこなっており、新たにボランティアと企業、学生を繋ぎ、困りごとを解決するプラットフォーム『Voluntell(ボランテル)』をスタートさせた。

カツミ工業は元々製造業をしていた。

西脇さんの父親が創業し、日本国内の日本国内のニッチな分野で9割のシェアを誇る特殊なか金型を製造していたという。

そんな圧倒的なシェアを持っていたがゆえに、その地位を守ることが必要だった。

しかし目の前の仕事をこなすことに追われるうちに防衛策がおろそかになり、情報が漏洩するトラブルにも直面したことで、事業を続けていくことが難しくなってしまったという。

そうして創業から40年目の節目に大きく事業転換することになったのである。

「当時は辛かったですね。そのままずっと製造業を続けていけると思っていました。でも、今振り返るとそれは天狗になっていたんだと思います。だから足をすくわれたんです。でも、その経験があったからこそ今があるのです」

この経験を通じて、西脇さんの視点は大きく変わった。物事を俯瞰して見られるようになったのだ。

製造業をしていた頃は、上ばかりを目指し、身の丈に合わない派手なことをしていた。

しかし今は、「ビジネスで大切なのは、規模でも人数でもなく、いかに利益を残すかに集中していくこと。そこに派手さは必要ない」と考えるように変わったという。

環境機器の販売、農業、ボランティアプラットフォームと、現在の業務は製造業の頃とは大きく異なっているように見える。

しかし、その根底には製造業時代に培った経験と考え方が生きている。

製造業時代、シェア9割を誇る金型を製造していても下請けの立場から抜け出せなかった過去の経験が、西脇さんに「メーカーとして生きるためには、自ら価格決定権を持つことが重要だ」という気づきを与えた。

ただ商品を作るのではなく、組み合わせることで価値を生み、自ら価格決定をすることができる仕組みを構築する。

その発想のもと、環境機器の販売、農業、ボランティアプラットフォームへと活動を広げているのだ。

西脇さんは「いかに利益を残せるか」という視点を大切にしながら、社会の課題解決につながる事業へと挑戦を続けているのだ。


▼西脇さんへの『もしも』のインタビュー

― もしも、過去に戻って自分にひとつだけアドバイスができるなら、いつに戻って、どんなアドバイスをしたいですか?

大学生の頃に戻りたいですね。

そして、自分に『もっと広い世界を見てこい』と伝えたいです。

 

― そう思うようになったきっかけはありますか?

製造業を営んでいた頃、ベトナムに事務所を開設しました。

ベトナムで居酒屋に行くと、バックパッカーの若者たちと出会うことがよくあったんです。

彼らは、日本から来て居酒屋でアルバイトをしながら、次の目的地を決めていました。

「ベトナムを抜けてカンボジアに行く」や「ラオスに行く」と話しているのを聞いて、自由でいいなぁと思ったんです。

さらに、日本の有名企業のベトナム法人のCEOとお酒を飲みながら話をしたとき、僕は「日本に来る外国人は日本語を話さないことが多いですよね」と何気なく言ったんです。

するとその方に「そういうことを言っているから日本は成長しないんですよ」と言われたんです。

日本で英語を話している外国人は、インド人や中国人など母国語が英語ではない人たちだと言われてハッとしました。

島国である日本は外から来るものを受け入れる力が弱く、挑戦しない風土が根付いているという指摘を聞いて、なるほどと納得したんです。

実際に、僕が知り合ったベトナムの若者たちは、国境を越えることをまったく苦にしていませんでした。

「ちょっとラオスに行ってきます」、「カンボジアに行ってきます」と構えることなく旅に出て、いろんな経験を積んでくるんですよ。

だから僕が大学生に戻れるのなら、財布ひとつだけ持って旅に出て、いろいろな経験をしたいですね。

その経験の中にいろいろなヒントがあって、自分の財産になると思います。

 

― 今の学生たちにも、海外に出るよう勧めたいですか?

社会人になるとバックパッカーのような旅はなかなかできないので、学生の間に展途上国へ行ってみてほしいですね。

たとえば「オーストラリアに留学したい」と言う子も多いですが、すでに成熟した国に行っても、ハングリー精神は学びにくいんです。

それよりも、成長の途上にある国に行くと、どうやって経済成長をしていくかを感じることができますからね。

ベトナムなら、都会は日本よりも発展している先進国の面もありますが、一方で昔の日本のような面も残っています。

そうした国を訪れることで、日本がどのように成長してきたかを感じることができるはずです。

そうした国で得た経験は自分の力になるので、困難なことがあっても踏ん張れるようになるんじゃないでしょうか。

 

― そう思うようになったきっかけはありますか?

実は、僕自身は結構大丈夫な方なんですよ。

怖いと感じることもあるかもしれませんが、右と左とまっすぐさえ知っていればタクシーに乗れますよ。

僕はベトナム語を喋れませんけど、ひとりでタクシーに乗れるようになりました。

もしかしたらぼったくられるかもしれませんけど、タクシーのドライバーとのそうした駆け引きも経験になりますしね。

それに、現地の人々と深く関わることで、表面では見えない文化を知ることができます。

ベトナムの事務所に行っていた当時、現地のスタッフに「日本人のいないような飲み屋に連れて行ってほしい」と頼んだことがありました。

真っ暗な路地にある店で、一緒に行った子は「カバンを膝の上から絶対に外すな」と注意されました。

もし何かあれば大変なことになるかもしれないと思いましたが、それがリアルな現地の姿なんです。

また、製造業の時代には、ベトナムの田舎に仕事を発注していたので、現地にまで足を運んでいました。

トイレも穴を掘っただけなんですよ。

そうした文化の中で育った子たちが、日本に実習生で来て、家族のためにお金を稼ごうとがんばっていたんです。

そんな彼らの背景を知っていたからこそ、雇用主としてできるだけ無駄遣いをさせないようにサポートすることが大切だと考えることができました。

都会は、わざわざ日本に来る必要ないんじゃないかと思うくらい発展しているんですよ。

でも、そういう華やかな部分だけを見ていてはわからないことがあるんですよね。

 

―  西脇さんが海外で得た経験は、今の事業にも活かされていますか?

たとえば、今取り組んでいるボランティアのプラットホーム事業は、環境機器のアースキューブがスタートなんです。

アースキューブは火を使わずにゴミを灰にする、熱分解技術を利用した機械です。

火を使わずに灰にすることなんてできるのか? と、最初は疑われてしまうんですよね。

そこで、自分で特殊車両を作り、『移動式アースキューブ』として各地を巡って、実際に見てもらうことにしたんです。

その旅で学生や企業、ボランティア団体などいろいろな人に出会い、さまざまな困りごとを知りました。

そうした課題を解決することが、私の残された人生の使命だと感じています。

ベトナムで現地を見てきたように、その場に足を運び話をして、経験を積むことがすごく大事だと思っているんです。

新しいプラットホームでは、学生たちにボランティアを通して多くの経験を積んでほしいと思っています。

経験が増えれば、それだけ自分の中の引き出しの数が増えて、選択肢を増やすことができます。

さらに、自分の引き出しと他の人の引き出しをかけ合わせれば、無限の組み合わせになりますよね。

ボランティアというひとつのキーワードを通して、学生と企業が繋がることで、学生にとっては経験を増やしながら働く準備をすることができ、企業にとっては同じ志を持つ学生との繋がりを持つことができます。

学生や企業の困りごとを聞いていると、ギャップが埋められずにいる感じがするんです。

 

― 学生と企業にはどのようなギャップがあるんですか?

たとえば、僕ら世代は、今の若者に対して「今の若い者は」と言いますけど、僕らが若い頃は親父世代が「今の若い者は」と言っていたと思うんです。

これは、生きてきた時代が違うので、ずっと変わらないと思うんです。

どうしても世代でギャップがあるんですよね。

転職の考え方にも世代間でギャップがあります。

僕たちの世代は、モノがない時代に育ったので、稼ぐことに必死だったし終身雇用が当たり前だったので転職なんてしてはいけないという風潮でした。

でも、今は大学を卒業して3年以内の離職率は4割程もって、転職することに大きな抵抗はないんですよね。

転職については『ジョブホッピング』と呼ばれることもあります。

かっこいい言葉ですけど、これはある特定の人たちがスキルアップをしてキャリアアップをしていくからかっこいいんですよね。

実際に3年以内に会社を辞めた人の話を聞くと、上司と反りがあわなかったとか、会社の体制が合わないという理由で辞めていて、キャリアアップできていないんです。

そして中小企業の仲間に聞くと、若い人が会社を辞めいくことが当たり前になっていて、採用にすごくお金を使っています。

でも本来は、人が辞めない風土を創ることが企業として必要なことのはずです。

それぞれにしっかりと目向けると、それぞれがバラバラの方向を向いているからギャップを埋められないことがわかってきます。

新しい事業では、このバラバラなものを繋いでいって、ギャップを埋めていけるようにしたいと思っているんです。

 

― 西脇さん、ありがとうございました。

西脇さんのYoutube動画はこちらから

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